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【用語解説】ネジの焼付き防止/機構・環境別の潤滑

ネジの焼付き防止

部品接合に使用される締結用ネジには、主に以下のような潤滑特性が要求されます。

  1. 発生軸力のバラツキが少ないこと。
  2. 長期に亘り焼付きがなく、取外しが容易なこと。

発生軸力のバラツキは、同じトルクで締め付けても、ある時は締結力不足によるネジの緩み、またある時は締め過ぎによるネジの破損(素材の降伏応力以上の負荷がかかり、ネジが伸び切る)という不具合の原因となります。これはネジ自体の摩擦面性状も影響しますが、使用する潤滑剤も一つの要因となります。また長期に亘り焼付きを防ぐには、使用される潤滑剤自体の化学的・物理的安定性も要求されます。

 
【ネジ締結の一般式】

このような締結用ネジの焼付き防止には、潤滑被膜を形成して摩耗・焼付きを低減する二硫化モリブデン等の固体潤滑剤の活用が有効です。これは固体被膜であるため、一般的なオイル・グリースの流体被膜よりも耐熱性・耐食性・耐荷重性に富み、摩擦係数の安定性に優れていることが理由です。従って固体潤滑剤を高濃度に配合した当社焼付き防止用潤滑剤は、締結用ネジの焼付き防止に大変効果的です。

 

ステンレスネジの焼付き防止

一般的な鉄系素材では対応しにくい高温・多湿・化学的雰囲気等の悪条件下で使用されるステンレスネジは、次のような潤滑上の課題があります。

  1. 自身の低摩擦・耐摩耗性が一般的な鉄系素材より劣る。
  2. 熱伝導率が低く熱膨張係数が高いため、特に高温下では雄ネジと雌ネジの密着性が高まり、摩擦が発生し易い。
  3. 基本的に焼付きを助長する悪条件下で使用される。

ステンレスネジの焼付き防止には、特に低摩擦性に優れる固体潤滑剤である二硫化モリブデンを配合した製品が有効であり、ペースト製品で言えば350℃以下の温度環境には当社製品 モリペースト500、500℃前後の温度環境にはモリペーストASが最適です。
しかし、それ以上の高温下の場合、二硫化モリブデン等の固体分や油脂から発生する硫化物や塩化物などが、金属腐食の原因となることがあります。このような冶金学的な影響を考慮し、腐食を助長する成分の発生が少ない固体潤滑剤や油脂を用いた当社製品としてスミペーストBNが使用されることもあります(ただし、摩擦係数は二硫化モリブデン系ペーストより高くなります)。